2500年続く仏教の思想とSDGsはとても似ていて、実はその両方がみなさんの身近にあるものなんです。
これを読まれている方はおそらく社会貢献やSDGsに関心がある方かなのかなと思います。素敵ですね。今回のコラムで少し新しいSDGsの捉え方を見つけてもらい日々の生活に活かしてもらえたら嬉しいです。
私は現在会社勤めをしながら大学院で「仏教」を学んでいるという少し変わり者です。ではなぜ社会人をしながら仏教を学んでいるのか?仏教って宗教?なんだかこわいし、怪しい、、、と素直に疑問に思われた方もいらっしゃると思います。
少し話は変わりますが、2021年5月に日本経済新聞電子版の企画で「ウェルビーイング 経営に幸せを」という連載が話題を呼びました。その記事にはトヨタやロート製薬、積水ハウスなどがこぞってウェルビーイングに取り組んでいる、という内容でした。また、日本におけるウェルビーイング研究の第一人者でもある慶應義塾大学の前野隆司氏が「ウェルビーイング経営で創造性が3倍、生産性が3割向上する」という研究結果を発表したことも記憶に新しいです。
では、そもそも「ウェルビーイング」とはなんなのか?
ウェルビーイングを直訳すると「幸福」という意味です。働き方改革が進む中、働く人の「幸せ」こそが重要な要素であるということを各社が注目しはじめていたのです。では「幸福」とはなんなのか?「幸せ」とはなんなのか。それを明確に答えることができる人はどれほどいるでしょうか。「人はなんのために働くのか?お金のため?いやそれだけではない。そもそも人はなんのために生きているのか?」そのような答えはインターネットで検索しても、どこにも書いてありません。
私は様々な研究や書籍などで学びを深めた結果、幸福とはつまるところ、「こころ」の問題であると仮説を立てました。それではその学問として突き進めるとすれば?心理学や哲学、コーチング、NLPなどさまざまな分野がありますが「人として」どうあるべきか、を考えた際に、2500年以上続く最も歴史ある学問を見つけたのです。それがお釈迦様の教え、仏教だったのです。そして恩師からの薦めと応援もあり、私は仏教を「信仰」としてではなく「学問」として大学院を選択しました。
実践して分かった想像以上の効果
結果、その学びは非常に面白く、実際に日々の生活、ビジネスに活かすことができており相当な効果を発揮しています。具体的には日頃の人間関係は協力関係が築きやすくなり、さらに自分自身イライラや感情的になるようなことが減り、ストレスは減少。仕事の生産性も格段に向上しています。それはなぜか。全てお話するとキリがないのですが、要は仏教の考え方はまさにウェルビーイングなのです。
大学院での研究は、小難しい仏教の歴史や経典などを整理し先人の智慧をレポーティングしていくという地道なものがほとんどです。ただこの記事で専門的な内容を記載してもキリがありませんので、今回はお釈迦さまの教えのほんの一部を、わかりやすくお伝えしたいと思います。
一言で言うと「誰一人として一人では生きていない」という教えです。
想像して頂きたいのですが例えば、今みなさんが着ているその服。あなたの手にわたり、着るまでには誰かが糸を作り、デザインし、製造し、流通させ、そして自分の手元に着ています。今日の夜ご飯もそうです。さまざまな工程を経て私の口に運ばれます。自分で野菜を作って全て自給自足しているという方も極めて少数ですがいらっしゃるでしょう。ただもしそうだとしても、天候の恵み、つまり太陽の日照と雨の水分、大地の栄養素が無ければ野菜は作れません。
日常の会社での仕事も同じです。サービスやプロダクトを作る人がいて、セールスする人がいて、請求書を発行しお金管理をする人がいる。その背景には経営陣が未来を描き方針を定めている。自分一人で仕事しているんだ!という人がいたらおそらく嫌われているでしょう。。
自分個人にたとえれば、両親があの日あの時、あの場所で出会わなければ(♪)、そして愛情を注ぎ、育ててくれなければ今の自分は無いのです。
そのように考え気付く事で「おかげさま」という気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。そして全てのものに対して「ありがたい」とも。ご飯を食べるときの「いただきます」や「ごちそうさま」、これらは日本に根付いている仏教的な国民的文化であり、お釈迦さまが説かれている教えの中で一番わかりやすいものかと思います。
自分一人で生きている人はいない。周りのおかげで生かされている。さらにそれをもう少し踏み込んで考えると、自分と他人・社会は一つにつながっている、とも捉えられます。つまり、私がどうしたい、どうありたい、ではなく私たちはどうしたいのか。「私」ではなく「私たちとして」物事を考える、その共同体感覚とも呼ばれる自他の垣根を無くしていく思想が仏教思想の本質なのです。
それではSDGsと仏教がなぜ繋がるのか、というお話をすると、SDGsの基本的概念として、「持続可能な社会。誰一人取り残さない」というものがあります。個人の目先の利益だけでは無く、地球規模で人類をとらえ持続可能な社会を考える取り組みです。価値観の多様化を受け入れ、ジェンダーの区別を無くし、人類のみの視点ではなく地球規模で自然(気候変動など)を考えていく。地球を一つの大きな共同体であると考えれば、当然、貧困や戦争を無くすという思想にも自然に行き着きます。
人は一人では生きていない。まさにこれらは先ほど述べた仏教思想と一致するのではないでしょうか。
私はこころを研究する上で宗教を対象とし、仏教を選択しましたが、もともと仏教に特別な信仰があったわけではありません。そして仏教以外の宗教を否定するつもりもありません。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教も、何かしら素晴らしいものであると考えています。私はたまたま日本に生まれ育ち、前途の「いただきます、ごちそうさま」お仏壇の前では手を合わせる、といった仏教に慣れ親しんで育ちました。海外で住んだりビジネスをする際に、その土地の宗教観を知ることが最低限のマナーであるのと同じ感覚で、その生まれ育った文化に沿った宗教を学問の研究として選択したのです。
最後にダライラマ14世のノーベル平和賞受賞スピーチの言葉をお借りし、締めくくります。
「すべての宗教の目的は一つしかない。人間の善なるものを育み、あらゆる人間に幸福をもたらすこと。哲学的な違いはあっても、人類の発展、愛、他者を敬う心、そして他者の苦しみを分かち合う心の大切さを説いている」
最後までお読みいただきありがとうございました。
世界が平和でありますように。そして皆さんの幸せを願っています。
筆者 HR坊主
「もしお坊さんが社会人だったら 」企業に勤めながら大学院で仏教を勉強中。
学びと日々の気付きをみなさんへお届けできたらと願い、Twitterにて情報発信。